中小企業こそやるべき!マーケティングのDXを進める方法
日本国内においてマーケティングDXの取組みは、先進諸国の中でもかなり遅れています。
アメリカでは、11人以上の従業員がいる企業の93%はマーケティングDXに取組んでいます。日本では10%にも満たない状態です。
生産性の差においては、アメリカと日本では5倍以上の開きがあります。
遅れている原因は、「日本のITが遅れていること」と「中小企業の経営者のITリテラシーが低いこと」が上げられます。
2025年が世界に後れを取るかどうかの分岐点といわれています。しかし、取り組んだから一足飛びに結果が出るかというとそうではありません。
試行錯誤を繰り返しながら2年ほどの年月を費やしてノウハウが確立していきます。今すぐにマーケティングDXに取組んでも2025年に間に合うかどうかの瀬戸際にあるのです。
マーケティングDXとは
経済産業省によると、DXとは以下のように定義されています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること
経済産業省
簡単に言うと、DXとは「デジタルを活用してビジネスモデルを変革する」ことです。
データ化するだけではなく、自動化することで工数を削減し、効率を上げることができるようになります。
マーケティングDXに取組む理由
冒頭でも紹介したように2025年問題は目の前です。後れを取らないためにもマーケティングDXに取組む理由は以下の通りです。
- 世界的競争を勝ち抜く
- デジタル活用の普及
- データ量の増加と一元管理
- 人材不足の解消
- マーケティング業務の複雑化と長時間労働
1.世界的競争を勝ち抜く
国内企業がデジタル化に乗り遅れて世界的競争に取り残されるといわれている分岐点が2025年。
企業には2025年の崖を乗り越えられるような体制の構築が早急に求められています。
2. デジタル活用の普及
下記のグラフからも解るようにモバイルの普及率は95%を超えています。
これは、誰もが簡単にネット上にある情報を取得できるようになったことを示しています。
だから企業は情報を出し惜しみするのではなく、ユーザーが理解できるように情報を発信して信頼を得るようにしなければ指示されません。
ちなみに、BtoB取引において、ネット上からの情報取得で「この企業にしよう」と決めている割合は57%にも上ります。
これからは、欧米と同じように足で稼ぐ営業は終焉を迎え、デジタルでリード(見込み客)を獲得し、MAなどのツールを使ってリードを育成する営業スタイルに変化していきます。
3. データ量の増加と一元管理
展示会で名刺交換をした、交流会で名刺交換したなど、名刺はどんどん溜まっていくけれどもけれども営業担当者任せになっているのでデータ化もできずに無駄になってしまっているケースが多々見受けられます。
これらの名刺の情報を一元管理するだけではなく、営業部全員が情報を共有できるようにすることで労働生産性を向上することができるようになります。
4. 人材不足の解消
少子高齢化の進行により、我が国の生産年齢人口(15~64歳)は1995年をピークに減少しており、2050年には5,275万人(2021年から29.2%減)に減少すると見込まれています。
生産年齢人口の減少により、労働力の不足、国内需要の減少による経済規模の縮小など様々な社会的・経済的課題の深刻化が懸念されています。
特に、不人気職第一位の営業職は人材の確保がさらに困難になります。
人材不足の解消するには、マーケティングDXに取組むことが必要になります。
5. 長時間労働の解消
日本企業の営業担当者の一日の活動を時間で見てみると、顧客への営業活動の時間は全体の10~25%、顧客への提案書など資料作りにかかる時間が55%、社内資料や日報、報連相にかかる時間が20~35%と顧客との商談にかける時間が少なすぎます。
下記表からも解るようにアメリカなどの海外と比較すると、顧客と関わる時間は相当な開きがあります。
このような活動ができるのもマーケティングDXに取組みノウハウが確立されているからです。
マーケティングDXのメリット
マーケティングDXに取組むと様々なメリットを享受することができます。
- データに基づいた客観的な判断ができる
- 業務の効率化ができる
- 質の高い顧客体験を提供できる
1.データに基づいた客観的な判断ができる
従来通りであれば、リード管理は営業担当者任せ、リードの興味・関心度も営業担当者任せになっているので、主観によるところが大きく、効率も上がりません。
マーケティングDXに取組むとリード情報を一元化して、ランクを分けをして、ランクごとメールの内容を分け送信する。その結果をスコアリングできるので、効率的にリードにアプローチすることができます。
2.業務の効率化ができる
デジタルに置き換えることができた業務プロセスは、人間が行う場合とは比べものにならないほど効率化されます。
例えば、営業担当者が手作業で送っていた顧客への案内メールはMAで自動化することができます。Excelで管理していた顧客情報をデータベース化すれば可視化でき、漏れがなくなります。データ収集やレポート作成などのルーティンワークを自動化すれば、少人数でも売上に直結する仕事に注力することができます。
3.質の高い顧客体験を提供できる
業務の効率化ができれば、重要なことに時間を割り当てることができます。
例えば、顧客一人一人に最適な情報を最適なタイミングで届けることができるようになります。
具体的には、顧客が閲覧したWebページや展示会の来場履歴、ウェビナーの視聴、営業との対話などのデータを一人のお客様に統合して管理・活用することができますし、展示会やイベントなどの行動情報、顧客の属性(企業情報、売上高や部署、役職など)の情報を掛け合わせることができます。
マーケティングDXのデメリット
マーケティングDXに取組むと享受できるメリットは大きいのですが、取り組むまでのデメリットが存在します。
- 組織の再編成
- オンライン一元管理への順応の難しさ
- DXへの反発によるDX推進の遅れ
- DX人材の不足によるDX推進の遅れ
1.組織の再編成
従来であれば、営業担当者が初めて会ってから成約までを一人で行っていました。マーケティングDXに取組むと営業のプロセスを分割し、それぞれの工程を分業化できる組織に再編成する必要があります。
上記の図からも解るようにリードを獲得するマーケティング部門、リードを育成するための企画部門、リードと連絡を取る顧客連携部門、ホットリードと商談する営業部門のように
営業部全体で顧客獲得に取組むための組織再編成を行うことになります。
2.オンライン一元管理への順応の難しさ
広告解析データやアクセス解析データ、顧客の購買データなど、マーケティングに関する多種多様な情報をオンラインで一元管理できるように、既存のデータを移行しなければならないのですが、複雑なデータであれば移行するのに大きな負担がかかる場合があります。
3.DXへの反発によるDX推進の遅れ
マーケティングDXに取組むということは、デジタルを最大限に利用することになります。
しかし、デジタルやデータに馴染めない従業員から反発を招き、なかなか推進できないことも珍しいことではありません。
だからこそ、経営トップ自らが、導入の意義を周知してもらうことや中間管理職を含めた上位層にも推進に参画してもらうことが重要になります。
4.DX人材の不足によるDX推進の遅れ
マーケティングDXを進めるにおいて、データ分析やライティング、プロジェクトマネジメントができる人材が必要になります。
いない場合は、新たに雇用するか、外部の力を借りて内部で人材を育てながら進めていくことがおススメです。
マーケティングDXの導入を進める手順
マーケティングDXを進める手順について紹介します。
- マーケティングDXを推進する目的を決める
- 目的達成のためのプロセスを計画する
- 推進するための優先順位を決める
- 推進体制を構築する
- PDCAサイクルを回しマーケティングDXを推進する
1.マーケティングDXを推進する目的を決める
目標を決めずにとりあえず取り組んで進めていくと上手くいきません。まず、目的を決めることが重要です。
目的が決まっていなければ、方向性が定まらないため、社内の共通意識を作りにくかったり、舵取りがしにくくなったりして、思うようにDX化が進みません。
DX化はあくまでも目的を達成するための手段であり、DX化そのものが目的ではないということを肝に命じて推進することが大切です。
2.目的達成のためのプロセスを計画する
目的が決まれば、どのように進めていくかスケジュールを立てます。
そのためには、各部門で既存事業の売り上げの推移の予測・目標を作成し、新規事業に期待する売り上げの推移も整理すること。他部署担当者や責任者、経営層まで、全社横断的な話し合いを行うことが重要です。
これができれば、どのくらいのスピード感・規模感で目的を達成できるかを把握できます。
3.推進するための優先順位を決める
施策ごとの人的リソースやコスト、達成するまでの日数などを算出し、優先度を決める。また、業務への影響度や実現のしやすさも考慮することが重要です。
例えば、顧客データの分類、集客ツール、メール作成と配信、セミナー開催、ブログ作成など取り掛かる順番を決めることです。
4.推進体制を構築する
マーケティングDXを推進する上で体制作りも必要です。主な推進体制は以下の3つです。
・IT部門拡張型:従来のIT部門を拡張する方法
・事業部門拡張型:各部門内にDX推進部門を設立する方法
・専門組織設置型:DX推進を専門で行う部署を設置する方法
この中では、専門組織設置型が主流です。DXの専門部署を立ち上げ、そこに経営層も深く関われば会社のDXがスムーズに進められるでしょう。
5.PDCAサイクルを回しマーケティングDXを推進する
DX化とは、導入すれば業績が向上するものではありません。試行錯誤をしながらブラッシュアップしていき、最終的に自社のノウハウになるのです。
そのために、PDCAを回してより良い方向に改善していくことが重要です。
まとめ
世界的に見てもマーケティングのDXが遅れている日本企業。特に、マーケティングDXが進んでいるアメリカと比較すれば導入率は30倍もの開きがあり、営業の生産性は5倍以上の開きがあります。
世界企業とこれ以上の開きが出ると日本経済は取り残される懸念があるとして経産省は2025年までに、マーケティングDXに取組むようにと警笛を鳴らしています。
マーケティングDXに取組み、ノウハウを確立できれば、営業担当者の労働時間も短縮でき、さらに顧客に対しても最適な提案ができるようになり、少人数で今以上の売上を上げることができるようになります。
そうなると不人気職で人材獲得が難しいといわれる営業職の確保もできるようになります。
取組むまでのデメリットもありますが、これを乗り越えると将来の明るい兆しが見えてきます。
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